なりたてオジサン司書の日々葉々

30歳過ぎて脱サラからの司書になったオジサンの日記です。司書課程のレポートや、あとは趣味のアレコレを書いています

図書館情報技術論レポート「自身の考える新図書館構想について論じなさい」

図書館情報技術論「自身の考える新図書館構想について論じなさい。

本科目では、図書館における情報技術を切り口にして、基本的な学習をしました。

それらの情報技術を総合的に活用し、将来の図書館はどうあるべきかについての自身の考えを、レポートにまとめなさい」

 

 これからの図書館について構想する場合、電子図書館の構想はどうあっても外せないものである。急速な技術の発展に伴い、インターネットは発達し、それは日常生活に深く入り込み、もはや切っても切り離せないものへとなった。図書館においても例外ではなく、膨大な資料の管理にコンピュータを活用している。また図書館員や利用者はコンピュータを使い蔵書検索をすることで、いとも簡単に探し出すことができ、さらに利用者は自宅や外にいながらも、インターネットを通じて蔵書の確認や予約まで行うことができる。さらに図書館はHPを作成し、自館のイベント情報などを発信している。利用者はわざわざ図書館に足を運ばなくとも、いつどこでどんな催しが図書館で開かれているか確認することができる。このようにインターネットと図書館の発展は切っても切り離せないものになっている。そんな中で注目を集めているのが、電子資料である。
 電子資料とは本などの媒体ではなく、CDやハードディスクにデジタルデータとして存在する資料である。本を画像として取り込んだり、テキストデータ化しているものもあれば、元からデータとして作成された資料もある。資料のデジタル化は、貴重な資料をそれ以上傷めることなく、内容を確認できることなどがある。そしてデータ化されれば、遠く離れた場所でもほとんどタイムラグなしで閲覧することが出来るのである。ただし、デジタル化の手間や、著作権などの問題があるため、何でもデジタル化するわけにはいかない。
 こうしてデジタル化され、電子資料となった資料を扱う電子資料の図書館、つまり電子図書館の構想が当然のように持ち上がってくるのである。現在でも、電子資料を扱っている図書館はいくつかあり、その多くは図書館のデータベースにある電子資料を提供している。電子資料の利用は、利用者の持つ情報機器を介してインターネットで資料を探し、貸出・閲覧が可能な電子資料の貸出を行う。そして貸出期限が過ぎれば、自動的にPC上からデータが消えるという仕組みになっている。このサービスをいち早く取り入れたのが東京都の千代田図書館である。次に大阪の堺市立中央図書館が導入し、その後も複数の図書館がこのサービスを開始し、2015年10月時点では35館以上が取り入れている。しかし全国で1300はある公共図書館の内、35館という数は非常に少ない。これに対し、米国では公共図書館の実に95%が電子資料の貸出サービスを実施している。これだけで一概にサービスが劣っているとは言えないが、電子資料の分野においては後れを取っていると言わざるを得ない。
 電子図書館において新たな段階として目指すものの一つに「クラウド電子図書館サービス」というものがある。クラウドとは正確に定義することは困難だが簡略化するならば、自身が保持している端末ではなく、インターネットを通じてデータやプログラムを保存したりアクセスしたりすること、と言える。この場合の自身とは図書館を指し、サーバ設備と電子資料などのデータを図書館が持たず、クラウドを提供しているプロバイダが保有する資源を用いて、自館の図書館サービスを提供する形態を「クラウド電子図書館サービス」という。これはすでに和歌山県有田川町立図書館で開始されているサービスで、iPadで利用可能である。クラウドを利用したサービスでは、共用で電子資料の収集を行うことができ、さらに利用者はどこからでも簡単にネットワーク経由でアクセスすることができるのである。ここ数年でスマートフォンiPadの様な携帯端末が普及し、総務省のデータでは2015年末の情報機器端末の世帯普及率は携帯電話が95.8%(内スマートフォンは72.0%)、PCが76.8%となっている。実際のところ、図書館は真面目で窮屈で、人によっては近寄りがたいイメージがあることは否めない。しかし図書館外からインターネットを通じて資料の貸出が行えるとなれば、図書館に入ることに抵抗を感じていた潜在利用者も、抵抗感が少なく利用できるようになる。全ての国民への利用提供に一歩近づくこととなる。さらに2016年に行われた内閣府の調査では10~17歳のインターネット利用率は80.2%となり、その内スマートフォンは47.2%でタブレット端末が20.9%となっている。図書館に足を運ぶと、利用者の多くがご年配や幼い子連れの親であることが分かる。ヤングアダルトは非常に少ない。現在スマートフォンなどでインターネットに慣れ親しんでいるヤングアダルト層へも図書館利用の大きな足掛かりになる。また、移動に不自由のある障碍者に対しても、非常に便利に使えることは想像に難くない。様々な人に気軽に利用してもらうにも、クラウド電子図書館サービスは非常に優れたサービスである。
 しかしながら、著作権の問題や、各出版社との契約、導入までのプロセスなど多くの問題を抱えている事は確かである。その為、図書館員は新たな情報技術の知識を学び続け、新たな流れに取り残されないための努力が必要である。

 

〈参考文献〉
大串夏身編著 「最新の技術と図書館サービス」 青弓社 2007
細野公男・長塚隆共著 「デジタル環境と図書館の未来」 日外アソシエーツ 2016
植村八潮・柳与志夫編 「ポストデジタル時代の公共図書館」 勉誠出版 2017

 

 

 

 これからは電子図書館だろう!という決め打ちで、図書館でそれ系の本を片っ端から借りて、使えそうなところをつまみ食いしました。それぞれの資料に実例が載っていたので、それを根拠として、個人的にこうあって欲しいなと言う願望を書きました。実例や数字という根拠を挙げられたのが、個人的にはよかったのかな、と思います。自分の願望とは言いましたが、教科が情報技術論なので、やはりそれっぽい題材を意識して選びました。ちなみに参考文献に挙がってない本もたくさん借りましたが、(今回のレポートに)使えたのがこの3点でした。